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十五夜とは、旧暦の8月15日を指す言葉です。昔は7〜9月が秋と考えられていたため、十五夜は秋の名物行事として国内に広まりました。十五夜の月が「中秋の名月（秋の中頃に見られる名月）」と呼ばれるのも、その名残です。現在でも秋の行事と捉えても違和感が少ないのは、十五夜が新暦では秋に入る少し前か、初秋頃にあるためでしょう。
十五夜の時期の空は、空気が澄み渡っていて晴れ間が多いため、美しい月が良く見えます。十五夜はそのピークで、月が最も美しく見えるとされるタイミングです。十五夜では、一年で最も美しいといわれる中秋の名月を眺めることが、行事のメインとなります。

日本では、古来より月を愛でる習慣がありました。古代中国から伝わったもので、平安時代には、貴族の間で月を眺めながらお酒を飲んだり和歌を詠んだりする習慣が根付いていたそうです。
庶民の間で広まったのは、江戸時代に入ってからだといわれています。その頃には月を愛でるだけでなく感謝や願いを込める習慣も加わって、お供え物を用意して、農作物の豊穣を願いながら月を眺めることが十五夜の定番となりました。

十五夜は、旧暦の8月15日に合わせて行われることから、毎年日にちが異なります。 旧暦は1年の長さが354日しかなく、現在採用されている新暦に合わせると、毎年11日ほどのズレが生じてしまうためです。
2020年は10月1日でしたが、2021年は9月21日が十五夜となります。去年よりも早いので、間違いのないように注意してください。

十五夜は、感謝と願いを込めて月を眺める行事です。そのため、月の神様に対してお供え物をする必要があります。
お供え物は地域によって異なりますが、定番は「月見団子」です。十五夜にちなんだ15個のお団子をピラミッド状に積み上げて、月に向かってお供えしましょう。一番上のお団子が、霊界の懸け橋となると考えられています。お団子はお皿に平らに並べるのではなく、積み上げることが理想的だといえるでしょう。
地域によっては、その頃に収穫された作物をお供えすることもあるようです。サツマイモや枝豆、栗など、身近に収穫物があれば、月見団子と一緒にお供えしてください。 収穫物には、後述するススキや、秋に咲くお花も含まれます。十五夜にぴったりの季節のお花も飾って、十五夜をより華やかに彩りましょう。

十五夜にはお月見をして楽しみますが、ただただ月を眺めるというわけではありません。平安時代の貴族は、和歌を詠んだり楽器を演奏したりと、それぞれの趣味に合わせて月を愛でていたそうです。現代に合わせるのであれば、家族で一緒に食事をしたり読書や映画鑑賞をしたりと、月を眺めながら自由に過ごすと良いでしょう。
お供え物の月見団子は、お月見をしながら食べてしまって構いません。「お供え物に手を出すなんて、罰が当たりそう」と考える人もいますが、月見団子は、たくさんの人で分け合って食べることで神様が喜ばれるといわれています。
一昔前は、庭先にお供えしてある月見団子は、ご近所さんが勝手に食べても良いというルールもあったようです。月見団子が減っていれば「神様が食べてくださった」と考えられていたので、家族はもちろん、ご近所さんと分け合って食べても良いでしょう。

十五夜は一年で最も月が美しく見える日ですが、運悪く曇り空になって月が隠れてしまうこともあります。
十五夜に月を眺めることが難しければ、十三夜にお月見をしましょう。十三夜とは、旧暦の9月13〜14日の夜を指す言葉です。2021年の十三夜は10月18日なので、十五夜を逃しても再挑戦できます。十三夜は、大豆や栗を備えて月を眺める行事で、別名、豆名月や栗名月とも呼ばれています。まだ秋が続く10月は、十五夜と同様に美しく月が眺められるシーズンです。十五夜の天候に関わらず、10月にも空を眺めて美しい月を観賞してみてください。

十五夜に欠かせないのが、「ススキ」です。ススキは、農業を象徴する稲の代わりで、月の神様の依り代と考えられています。本来であれば稲を飾りたいところですが、十五夜は収穫期に当たって稲が不足するため、ススキが代用されるようになったといわれています。 ススキの鋭い切り口が魔除けになると考えられていて、お守りとして古来より大切に飾られてきました。十五夜には月見団子と一緒にススキを飾って、お月見を楽しみましょう。
ススキの花言葉は、「活力」と「生命力」です。農業を行っていない人でも、家族の健康や幸せを願って、十五夜にはススキを飾ってください。

十五夜といえばススキを飾るイメージがありますが、華やかさがほしいという人は、秋に見頃を迎えるお花を一緒に飾りましょう。
十五夜の飾りとしておすすめなのが、「キキョウ」です。キキョウは秋の七草に数えられるお花で、星型に開くはっきりとしたシルエットの花弁と、深い紫色がなんとも魅力的なお花です。上品で控えめな美しさを持つお花なので、煌々と輝く月から主役の座を奪ってしまうようなことはありません。ススキと一緒に飾れば、和の雰囲気を壊さずに、さりげなく華やかさをプラスしてくれるでしょう。
キキョウの花言葉は、「永遠の愛」や「変わらぬ愛」、「気品」や「誠実」です。家族や恋人といった大切な人との絆を深めたいと考えている人は、ぜひキキョウを飾ってお月見を楽しんでください。

キキョウと同様に、秋に見頃を迎えるお花が「リンドウ」です。深い青色と控えめに開く花弁が魅力的なお花で、花弁の下部が釣り鐘型になっているのが特徴です。リンドウもキキョウと同様に清楚で上品なお花ですが、花弁の丸みが愛らしさを象徴しています。単体で飾っても良いですが、ススキやリンドウとも相性が良いので、アレンジとしてまとめることをおすすめします。秋頃には、リンドウを使ったアレンジメントがたくさん販売されるので、お気に入りを探してみてください。
リンドウの花言葉は、「悲しんでいるあなたを愛する」と「正義」です。リンドウは、古来より漢方として用いられてきた薬草でもあります。落ち込んでいる人を励ましたい時には、リンドウを贈って、美しい月を眺めながら心を落ち着かせてもらうと良いでしょう。

十五夜は、日本では古来より大切にされてきたお月見の行事です。普段何気なく見上げている月も、十五夜のお供え物や飾りつけと共に眺めてみれば、高価な美術品のように美しく見えるはずです。
十五夜には、ススキやキキョウ、リンドウといった和のお花を用意して、華やかにお月見を楽しみましょう。家族や恋人と一緒に月を眺めながら、互いの幸せを願ってください。